リックソフト(4429) 2019年2月26日(火)上場
1. 基礎データ
日本でトップレベルのAtlassian Platinum Solution Partner(アトラシアン)であり、技術力のあるシステム会社です。高利益率であることが特徴だといえ、今後の業績の伸びが期待されます。
ウォーターフォール型の開発から、アジャイル型開発へと移りつつあり、その中でも当社が扱うアトラシアン社の製品は高い評価を得ています。
当社グループ(当社及び当社の関係会社)は、当社、連結子会社(Ricksoft,Inc.)の計2社で構成されており、「我々の技術・知識・ノウハウを最高に発揮し、お客様の価値向上と社会の発展に貢献します。」を経営理念として掲げております。
「お客様のビジネスがグローバルでも競争力を持つように、世界のビジネスシーンで活用されている優れたツールを日本企業の方々にも使っていただきたい」という想いや「そこで得られたノウハウから生まれた自社開発ツールを世界に向けて提供したい」という考えを持ち、調査・分析から設計・構築・稼働・運用に至る一連のサービスを提供する「ツールソリューション事業」を主な事業として取り組んでおります。
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セグメントの開示はないため各事業の詳細な売上、利益については、不明だが、3事業を行っています。
①ライセンス&SIサービス業務
主にAtlassian社のソフトウェアの導入支援を行っており、お客様の課題解決のために提案からライセンス販売、コンサルタントとしてのプロジェクト参画やSI、研修、運用支援(ヘルプデスクによる問い合わせ対応等)まで包括的に行っています。
②クラウドサービス業務
客様へ当社グループで取り扱う製品の稼働環境としてのクラウド環境提供を迅速に行っている。24時間365日対応、取り扱い製品の専任技術者が運用管理するフルマネージドクラウドサービスを行っています。
③ソフトウェア開発業務
Atlassian製品の主力製品であるJiraやConfluenceに拡張機能をアドオン製品として自社開発を行い、Atlassian Marketplaceにて販売しています。
このAtlassian社はかなり勢いのある企業で、Nasdaqに上場しています。
時価総額はかなり大きく$20Bnを超えており、(2019年2月20日時点)、売上が急拡大しております。
英文にはなるが、以下の記事は非常に面白いですね。
10 Reasons to Buy Atlassian Stock and Never Sell
Atlassian社はパートナーを選別していますが、当社はかなり上位のプラチナパートナーとなっています。
具体的には、自社ソフトウェアを取扱うパートナーに対して技術認定試験を行っており、認定技術者数等に応じてパートナーランクを設定しているとのこと。
また、Atlassian社のHPで開示されている全世界のパートナーランキング(2018年12月時点)においては、全世界の400社以上のパートナーの中で当社は上位にランキングされており、アジアパシフィックでは最上位に位置しております
以下の伸びをみても急成長していることがわかります。
こういったソフトウェア会社ではありがちな赤字にならずに着実に拡大しつつ、利益率も向上しているところが評価ポイントとなります。
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社名 | リックソフト株式会社 |
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代表者名 | 大貫 浩 |
所在地 | 東京都千代田区大手町二丁目1番1号大手町野村ビル8階 |
設立年 | 2005年 |
役員 | 代表取締役 大貫 浩 取締役 服部 典生 取締役 鈴木 俊彦 社外取締役 早川 智也 社外監査役 ハミルトン みつる 社外監査役 青木 理惠 社外監査役 白田 太郎 |
資本金 | 95,050,000円 |
業種 | 情報・通信業 |
事業内容 | Atlassian Pty Ltd.が開発するプロジェクト管理用ツールをはじめとしたソフトウェア製品のライセンス販売及び導入支援等 |
2. 上場スケジュールと想定価格
仮条件決定日 | 2月7日(木) |
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抽選申込期間 | 2月8日(金)~2月15日(金) |
公募価格決定 | 2月18日(月) |
購入申込期間 | 2月19日(火)~2月22日(金) |
上場日 | 2月26日(火) |
想定価格(円) | 3,840 |
公募価格決定(円) | 4,000 |
3. 手取金の使途
バランスシートも良好ではあり、大きな投資を早急に行う必要はない可能性もある。注目は、海外への5,000万円程度の投資。これがどこで花開くのか。今後の成長可能性の資料などを確認する。
【手取金の使途】
上記の手取概算額289,296千円及び「1 新規発行株式」の(注)5に記載の第三者割当増資の手取概算額上限146,456千円については、今後の事業拡大に向けて行うライセンス販売に伴い、お客様要望により発生する導入支援やアドオンソフトの開発を担当するシステムエンジニア等の人員採用費として20,000千円(平成32年2月期に10,000千円、平成33年2月期に10,000千円)を、当該人員等の新規採用後の人件費として114,000千円(平成32年2月期に26,000千円、平成33年2月期に88,000千円)を、当社主力製品のWBSガントチャート for Jiraの機能改善等の既存製品改善及び新製品開発のための研究開発費として90,000千円(平成32年2月期に40,000千円、平成33年2月期に50,000千円)を、基幹システムにかかる設備投資資金として30,000千円(平成32年2月期に15,000千円、平成33年2月期に15,000千円)を、事業拡大及び人員増加に伴う本社増床にかかる保証金及び内装設備等の設備投資資金として30,000千円(平成32年2月期に30,000千円)を、米国子会社Ricksoft, Inc.への投融資として50,000千円を充当する予定であります。
米国子会社への投融資の具体的な内訳としては、システム開発者及びマーケティング担当者を人員増強するための人件費に30,000千円(平成32年2月期に10,000千円、平成33年2月期に20,000千円)を、自社ソフトのグローバル販売のための広告宣伝費に20,000千円(平成32年2月期に10,000千円、平成33年2月期に10,000千円)を充当する予定であります。
残額については、将来における当社サービスの成長に寄与するための支出又は投資に充当する方針でありますが、当該内容等については現時点で具体化している事項はなく、今後具体的な資金需要が発生し、支出時期が決定するまでは安全性の高い金融商品等で運用する方針であります。(注)設備資金の内容については、「第二部 企業情報 第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画」の項をご参照下さい。※3
4. 財務データ
黒字傾向が続いており、自己資本比率も高く、特に財務上の問題はないと思われます。
現預金が4億円程度(2019年第3四半期時点)であり、増資による資金が本当に活用さるかという点は気になります。
システムインテグレータの会社と同様、強固な財務基盤、分厚い現預金など、今後資本利益率の向上が期待されます。
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5. リスク分析
目論見書から気になったリスク要因は4点あります。目論見書のこの点は目を通すのをお勧めします。
①グローバルな事業展開
以下にあるとおり、海外での事業が加速しており、成長期待がなされるとともに、リスク要因としても上げられます。
グローバルな事業展開 平成28年12月、米国に子会社を設立しグローバルな事業展開の礎を築きました。平成30年2月期のソフトウェア開発売上高88,640千円の内訳は、国内企業に対する売上高が41,203千円、海外企業に対する売上高が47,436千円でありましたが、平成31年2月期第3四半期のソフトウェア開発売上高114,068千円の内訳は、国内企業に対する売上高が43,003千円、海外企業に対する売上高が71,064千円に成長しており、国内外ともに成長している中、海外企業に対する売上高の方がより高い成長を示しております。※5
②Atlassianへの依存
Atlassianへの依存が大きいことから、この点は大きなリスクです。ビジネスパートナーではありますが、仮に何らかの契約が継続できな場合はリスクとなります。仕入高に対するAtlassian Pty Ltd.の占める割合は94.2%となっていて、1社依存が高い会社です。
当社グループの成長は「Atlassian製品」の市場の拡大に対し、大きく依存しております。しかし「Atlassian製品」への過度な依存は望ましくないため、中長期的には「Atlassian製品」以外のツール提供(Alfresco、Tableau等)の比率を高めていく必要があると考えております※6
潜在株式数の割合は9.56%となっていて、ある程度の希薄化があるといえます。
④季節変動について
主要商品であるAtlassian製品等のライセンスは通常1年毎に更新が行われます。
また、顧客により更新時にアップグレード(ユーザー数の増加)が行われる場合は、ライセンス売上の増加につながります。過年度においてライセンスの売上高は、3月、6月、2月が他の月より多くなっており、季節変動があり得るというのは理解しておく必要があります。
6. 株主構成
公募株式数(単位:株) | 256,000 |
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公募(単位:株) | 76,900 |
売出(単位:株) | 179,100 |
オーバーアロットメント(単位:株) | 38,400 |
発行済株数 | 2,063,900 |
オファリングレシオ | 14.26% |
※オファリング・レシオ=(公募株+売出株)÷発行済株式総数
公募株式数もそれほど多くなく、人気化しそうな株といえます。
注目点は売出が少ないことで、オファリングレシオはかなり低めです。
株主名 | 株数 | 売出 | 比率 | VC | ロックアップ① | ロックアップ② |
---|---|---|---|---|---|---|
HS(株) | 1,000,000 | 45.93% | 90日間 | 1.5倍 | ||
大貫 浩(社長) | 380,000 | 179100 | 17.46% | 90日間 | 1.5倍 | |
NVCC7号投資事業有限責任組合 | 257,000 | 11.81% | 〇 | 90日間 | ||
神山 直規 | 180,000 | 8.27% | 90日間 | |||
ニッセイ・キャピタル6号投資事業有限責任組合 | 160,000 | 7.35% | 〇 | 90日間 | ||
山本 隆一 | 100,000 | 4.59% | 90日間 | |||
服部 典生 | 100,000 | 4.59% | 90日間 | |||
上位7名合計 | 2,177,000 | 179,100 | 100.0% |
※VCは、ベンチャーキャピタルの略、推測含む。
ロックアップは、「鍵を掛ける」という意味で、その銘柄の大株主等が、「公開後の一定期間、市場で持株を売却しない」旨、公開前に契約を交わす制度です。
基本的には、期間と価格の両方の条件が記載の際はどちらか一方が条件をクリアすれば株式保有者は売ることができる。
ベンチャーキャピタルの保有は、多くはなく、20%程度。ロックアップ解除条件が厳しいため、初値高騰後も市場に出回わる株は少なくなりそう。
7. 主幹事証券
シンジケート | 証券会社名 | 割当数(株) | 割当(%) |
---|---|---|---|
主幹事証券 | 大和証券 | 235,800 | 92.11 |
引受証券 | SMBC日興証券 | 7,600 | 2.97 |
引受証券 | SBI証券 | 5,100 | 1.99 |
引受証券 | 岡三証券 | 2,500 | 0.98 |
引受証券 | いちよし証券 | 2,500 | 0.98 |
引受証券 | 水戸証券 | 2,500 | 0.98 |
大和証券がかなりの割合なので、他での当選は難しい。
8. 初値予想
8000円~9000円前後
ただし、EPS90円程度から想定するとPER100倍となり、かなりの成長を織り込んだ価格。どちらかというと需給がタイトなことにより初値が高騰する案件だと推測。
attlassian社が非常に成長しており、時価総額が高いことから、外部要因としては、人気化すると予想されます。
成長性 ★★★★☆
attlance社の拡大余地が大きいこと
グローバルでの拡大が期待される点が評価される。
また利益率が高いもただのシステムインテグレータとは異なり、今後の成長が期待される会社
受給 ★★★★☆
吸収金額10億程度の中型程度だが、ロックアップ条件が厳しいことなどから、初値は高騰しそう。初日に値段がつかず、2日目以降となる可能性も。
上場タイミング ★★★★☆
2019年、2発目のIPOとして、注目度は引き続き高い
※1~※6は有価証券報告書から引用
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