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Sansan(4443) 初値予想/分析  2019年6月19日(水)東証マザーズ上場

1. 基礎データ

 

sansan事業とeight事業の主軸が二つの企業です。

大型IPOとして注目度は高いですが、赤字も大きく、初値には注目が集まります。

時価総額が高すぎるという評価も大きいですが、sansan事業自体は黒字です。

 

 

 

 

①sansan事 業

 

sansan事業は、セグメント上は黒字です。

後述するeight事業が大きな赤字となっており、トータルでは赤字の会社となっています。

 

sansan事業は、「Sansan, Where Business Starts 名刺管理から、ビジネスがはじまる」をコンセプトに、クラウド型の名刺管理サービス「Sansan」を法人向けに展開。

 

名刺は、ビジネスの出会いのシーンで交換される慣習が根強く、そこには、氏名や所属する会社、組織、役職、連絡先等のビジネスパーソンを表す正確な情報が記載されており、当社ではそこに着目してビジネスを展開しています。

 

また、名刺交換の履歴情報自体にもユニークな価値があるほか、現在でも紙のままで日常的に利用されていてデジタル化が進んでおらず、業務効率化や有効活用の余地が大きく残されていると考えています。

 

「Sansan」は、2019年5月 期 第3四 半 期末で契約件数5,738件、名刺管理サービス市場で81.9%(2017年時点)のシェアを獲得していると考えており、ほぼ寡占状態です。

 

また、その利便性が評価され、継続的に利用されるサービスとなっており、直近12か月平均の月次解約率は1.0% 以下に留まっており、サブスクリプション型のビジネスモデルといえそうです。(2019年5月期第3四半期末時点では0.73%)

f:id:IPOStudy:20190519110326p:plain※1

 

②Eight事業

 

「Eight」では、「Sansan」と同様に、名刺をスキャンするだけで、自分や交換相手の名刺情報が正確にデータ化されます。

 

「Eight」では、まず利用ユーザーは自分の名刺を登録することで、ビジネスライフを通じて活用できる自身のページが作成され、プロフィール管理が可能となり、データベースを蓄積することができます。

 

次に、交換相手の名刺を登録することで名刺管理機能が活用でき、クラウド上にデータ化された全ての名刺情報には、スマートフォンやパソコンから、いつでもどこでもアクセスが可能となり、データベースとして利用することができます。

 

2019年5月時点で、Eightの利用料金は、無料版と有料版があり、有料版は月額480円(年間4800円)で、大幅な赤字となっており、ユーザーがどれぐらい増えるかにこのビジネスに価値があるか変わってきます。

ユーザー数は、前期末2018年5月期214万人、2019年2月時点で235万人です。

 

 

 

③企業概要

 

出会いからイノベーションを生み出す」というミッションを掲げ、「クラウドソフトウェア」に「テクノロジーと人力による名刺データ化の仕組み」を組み合わせた新しい手法を軸に、名刺管理をはじめとした企業やビジネスパーソンが抱えるさまざまな課題の解決につながるサービスを展開しています。 

 

 

会社名 Sansan株式会社
所在地 東京都渋谷区神宮前5-52-2 青山オーバルビル 13F
設立 2007年6月11日
代表者名 代表取締役社長  寺田 親弘
資本金等 43億1250万円(うち資本金 28億1250万円)
株主 DCM
INCJ
未来創生ファンド
ゴールドマン・サックス
ニッセイ・キャピタル
環境エネルギー投資
サイバーエージェント
日本郵政キャピタル
リクルートストラテジックパートナーズ
salesforce.com
ジャパン・コインベスト
日本経済新聞社
T. Rowe Price
GMO VenturePartners
役員構成 代表取締役社長
寺田 親弘
取締役
富岡 圭
取締役
塩見 賢治
取締役
常樂 諭
取締役
田中 陽
社外取締役(監査等委員)
赤浦 徹
社外取締役(監査等委員)
本多 央輔
社外取締役(監査等委員)
横澤 靖子
社外取締役(監査等委員)
石川 善樹
事業内容 クラウド名刺管理サービスの企画・開発・販売
(取得済特許: 第4408302号、第5109184号、第5224556号、第5263759号、第5312701号)

 

2. 成長企業判定

 

売上の伸びは著しいですが、利益面で赤字拡大しており、成長企業判定としては直近が×です。

 

売上の半分近くが赤字となっており、この点は評価しづらいですね。

 

 

  売上 成長率 経常利益 成長率 成長率合計 判定
2016/05 3,150   -1,362      
2017/05 4,834 53% -657  52% 105%
2018/05 7,318 51% -3,022 -360% -309% ×

 

※40%ルール 「売上高の成長率」+「営業利益率」の値が40%を超えるかどうか
例:
企業の売上高の成長率が100%・・・営業利益率が▲60%まで
企業の売上高の成長率が40% ・・・営業利益率が0%以上
企業の売上高の成長率が20% ・・・営業利益率が20%以上

 

3. 上場スケジュールと想定価格

 

単独上場で、注目度は高いですが、果たして公募価格がいくらになるか、また初値が高くつくかはやや疑問。

 

 
仮条件決定日   2019/05/30(木)
抽選申込期間 2019/06/03(月) 2019/06/06(木)
公募価格決定   2019/06/07(金)
購入申込期間 2019/06/11(火) 2019/06/14(金)
上場日   2019/06/19(水)
想定価格(円)   4,075
公募価格決定(円)   4,500

 

成長企業ではありますが、売出比率が90%以上と、既存のベンチャーキャピタルのイグジットに見えますね。

当社のバランスシートでは有利子負債が少ないですが、大きな赤字を出している当社の借金がしやすいかは不透明です。

 

このまま赤字が続けば、今後大きな増資があり得る可能性もあり、資本政策も気になりますね。

 

公募株式数(単位:株) 7,510,000
公募(単位:株) 500,000
売出(単位:株) 7,010,000
売出比率 93.34%
オーバーアロットメント(単位:株) 1,126,500
発行済株数 29,932,353
オファリングレシオ 28.85%

 

4. 手取金の使途

 

第三者割当と併せて、凡そ61億円の手取金の増加。

基本的には、広告宣伝費に大きく使用するようで、ここには今後も資金を投下していくようです。

 

ざっくりいうと、販管費25億円、人件費、採用費41億円という内容です。

 

①広告宣伝費・販売促進費等のマーケティング投資 「Sansan」サービスや「Eight」サービス等の更なる認知度向上、顧客の継続利用や契約の拡大等を目的とした広告宣伝・販売促進費等のマーケティング投資の一部として、2,575,167千円(2020年5月期に1,075,167千円、2021年5月期に1,500,000千円)を充当予定であります。

 

②人件費 主にSansan事業における営業人員、及び製品開発のためのエンジニアリング人材等の採用等、事業成長を支える人材基盤を整えることを目的に、人件費の増分の一部として3,000,000千円(2020年5月期に1,000,000千円、2021年5月期に2,000,000千円)を充当予定であります。

 

③採用費 上記②の採用を行うため、人材採用費用の一部として600,000千円(2020年5月期に300,000千円、2021年5月期に300,000千円)を充当予定であります。※2

 

 

5. 財務データ

 

売上の伸びはすさまじいですが、赤字の拡大も顕著。

ここにきて大きな赤字を計上(30億円超)

 

長期借入金が2億円程度となっており、銀行から今後融資が受けられるかもカギです。

融資できない場合は、継続的に資金の手当てを増資などで補うこととなり、この点は懸念事項です。

 

f:id:IPOStudy:20190519112809p:plain※3

6. リスク分析

①広告宣伝活動等の先行投資

 

販管費が大きく、解約率が低いビジネスであるため先行投資としては適切な可能性もありますが、果たして回収がいつになるかは疑問。

 

当社グループの手掛ける事業では、先行者メリットを活かしつつ売上高拡大を目指すため、広告宣伝活動や開発活動、営業体制の強化等において一定の先行投資が必要となります。

 

特に、当社グループの知名度を高めるためのテレビコマーシャル等を中心とした広告宣伝投資は、新規ユーザー獲得に直接的に寄与することから、これまでも積極的に実施してきております。

 

しかしながら、その結果として2017年5月期及び2018年5月期においては営業損失を計上しているほか、累積損失を抱えております。

 

また、今後の広告宣伝活動について、その費用対効果を見ながら慎重に行っていく方針ではありますが、広告宣伝投資を縮小する場合には、新規受注や新規ユーザーの獲得に影響が出る可能性があり、広告宣伝投資の方針によっては当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。 なお、2017年5月期における広告宣伝費は1,573,483千円、人件費は1,282,869千円、営業損失は778,045千円であり、

 

2018年5月期における広告宣伝費は4,478,273千円、人件費は1,689,398千円、営業損失は3,061,454千円であります。

 

また、2019年5月期第3四半期連結累計期間における広告宣伝費は2,237,070千円、人件費は1,690,361千円、営業損失は655,001千円であります。(注)人件費は、給料手当及び賞与並びに賞与引当金繰入額の合計額であります。※4

 

7. 株主構成

社長が大きく売りださないこと、評価できます。

ただし、ベンチャーキャピタルの持分が大きく、大きく売り出しがある点はマイナス。

株価が1.5倍とならなければ、初値が付いた後は、大きな売りは出にくいですが、ロックアップ90日後も需給悪化には、要注意です。

 

 

 

株主名 株数 売出 比率
寺田 親弘 10,920,000 50,000 35.9
DCM Ventures China Fund(DCM VII), L.P. 2,030,000 675,000 6.7
(株)INCJ 1,740,000 1,740,000 5.7
(株)SMBC信託銀行 1,710,000   5.6
Sansan従業員持株会 1,470,000   4.8
ジー・エス・グロース・インベストメント合同会社 1,300,000 1,300,000 4.3
A-Fund, L.P. 1,280,000   4.2
富岡 圭 1,050,000 10,000 3.5
ニッセイ・キャピタル5号投資事業有限責任組合 900,000 450,000 3.0
EEIクリーンテック投資事業有限責任組合 690,000 345,000 2.3
上位10名合計 23,090,000 4,570,000 75.9
     
株主名 VC LU(日数) LU(株価)
寺田 親弘   90  
DCM Ventures China Fund(DCM VII), L.P. 90 1.5
(株)INCJ      
(株)SMBC信託銀行      
Sansan従業員持株会      
ジー・エス・グロース・インベストメント合同会社    
A-Fund, L.P. 90 1.5
富岡 圭   90  
ニッセイ・キャピタル5号投資事業有限責任組合 90 1.5
EEIクリーンテック投資事業有限責任組合 90 1.5

 

※LU= ロックアップ
VCは、ベンチャーキャピタルの略、推測含む。
ロックアップは、「鍵を掛ける」という意味で、その銘柄の大株主等が、「公開後の一定期間、市場で持株を売却しない」旨、公開前に契約を交わす制度です。

基本的には、期間と価格の両方の条件が記載の際はどちらか一方が条件をクリアすれば株式保有者は売ることができます。


8. 主幹事証券

主幹事は野村。公募価格次第ですが、この案件の評価はあまりされない様子。

 

シンジケート 証券会社名 割当数(株) 割当(%)
主幹事証券 野村證券 0 0.0
引受証券 SMBC日興証券 0 0.0
引受証券 大和証券 0 0.0
引受証券 みずほ証券 0 0.0
引受証券 SBI証券 0 0.0
引受証券 三菱UFJモルガン・スタンレー証券 0 0.0
引受証券 楽天証券 0 0.0
引受証券 マネックス証券 0 0.0
引受証券 極東証券 0 0.0


9. 提出会社の状況と経歴

従業員が多い割に、平均給与が高くて、驚きました。

 

  従業員 臨時雇用 平均年齢(歳) 平均勤続年数(年) 平均年間給与(円)
提出会社の状況 475 332 32.6 2.6 6,085,000

 

 

また、しゃちょの寺田氏の経歴は、三井物産経由で、企業。

若くて、大株主。今後の手腕に期待されます。

また、取締役兼大株主の富岡氏は、オラクル出身。

f:id:IPOStudy:20190519113729p:plain※5


10. 初値予想

野村證券の主幹事案件、大きな公募割れは避けられると想定しますが、やはり公募割れ

になる可能性が高いとみています。

 

注目度は高いのは間違いないのですが、4500円の強気の価格設定が裏目になるとみています。4000円をやや上回る初値を予想します。

 

セカンダリーも難しいですが、ロックアップがあるので、1.5倍まではあまりVCの売りも小さい。意外に高値もつける可能性もありますが、個人的には見送りたいと思います。

 

11.アンケート

↓良かったご参加ください↓

初値予想
~3,400
3,400~3,700
3,700~4,075
4,075~4,400
4,400~
 
 

 

 


オファリング・レシオ=(公募株+売出株)÷発行済株式総数

 

※1~※5 目論見書、有価証券報告書から引用
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